八高(はちこう)線はその名のとおり、
おたがいの頭文字を取って名づけられたものだと容易に推定される。
通常の線路との決定的な違いは“単線”であるということ、それと田舎を走っている運命で本数が少ないことである。総延長92kmで正確には高崎市の“倉賀野”までで途中の八王子から、ここ高麗川駅までは、1/3は電化されているが、それ以降群馬県方面はディーゼル車である。
どちらかと言えば、今どきめずらしく僅かな煙りとエンジン音を響かせながら走る健気で、頼りなさそうな、何とも云えない雰囲気を漂わせているディーゼル車が北国は好きだ。
車内をのぞいてみるとドアの開け閉めは、ワンマンのときは手動、オレンジの箱は整理券用、向かって左側がボックス席で右側が一人用の席となっている。もちろん一人用が人気があり、先に埋まってしまうようだ。
さらにトイレも付いており、道中生理現象を心配することはない、もっぱらボックス席で気の合った仲間同士酒でも酌み交わしながらの旅であれば請け合いである。筆者の願望もあるが、いつかはぜひ挑戦してみていテーマでもある。
話が長くなったが、その八高線の毛呂(もろ)という駅に目的の病院がある。当初はケロと呼んでいたが・・
地元の町医者にしばらく罹っていたが、そこの院長によるともう面倒見切れないとの話から紹介状をいただいた病院でもある。
地元の町医者にしばらく罹っていたが、そこの院長によるともう面倒見切れないとの話から紹介状をいただいた病院でもある。
小さな駅舎を振り返るとタクシーが一台、こんなところで商売になるのか心配だが、それより今は自分のことを考えるのが先決だ。
駅からの一本道を仰ぎ見れば否応なく正面に目に入るのが某病院である。いちおう名前は伏せておくが・・・ここの耳鼻科を受診するため去年の12月に予約していたためで、今日は手術前の検査が主な目的である。
駅からの一本道を仰ぎ見れば否応なく正面に目に入るのが某病院である。いちおう名前は伏せておくが・・・ここの耳鼻科を受診するため去年の12月に予約していたためで、今日は手術前の検査が主な目的である。
いつものように大混雑のなかでレントゲン、心電図、採血、採尿、血液凝固などを確実にこなし、すべてが終わった頃はすでに正午を過ぎていた。
そこで後悔したのは帰りの時刻を調べておかなかったことである。玄関前のバス亭をみると目的のバスは1時間後、仕方なく朝と同じで駅まで向かうとあろうことか、12時台は皆無!失意のどん底に拍車をかけるかのように今朝から、いや正確には昨晩から何も食べていないことに気づく。
辺りを見廻すと大判焼きの文字が・・思わず3個を購入、糖分が脳を刺激してか、帰りは徒歩しかないとの妙案が浮かんだのである。
田舎にしては交通量の激しく、おまけに狭い道路の端を、車に注意しながら歩く、心細いがアスファルトの照り返しと春の陽光を浴びながら調子良く歩いていたがそのうち汗が噴出、しかも体育館シューズのおかげで足の裏も痛くなってきた。追い打ちをかけるように風も出てきて急激な温度変化。
決断のときが来たようだ、男は近くのバス停を見つけるとそうつぶやいた。そろそろ1時間待つはずだった当初のバスが来る頃、そして到着したバスに小銭を握りしめ悠然と乗ったのである。
それにしても文明の利器とはこのことだ、バスからの車窓はそれは最高の気分で思わず居眠りしそうになった次第。
やはり、幾つになっても煩悩は捨てきれないと確信した北国であった。